年1500万円もらえる奨学金の意外な財源【超富裕層の節税⁈】
破格の年間1500万円の給付型奨学金を支給する、資産家が作った財団の海外留学支援制度。
その財源を追うと意外な事実も判明
・財団には単年度支給費分の資産しかない!
・奨学金原資のかなりの部分は税金!
・財団に移管時点で私財ではなく公的資金!
・公的資金を使えば広く一般大衆からの批評を受けるのは当然
例えば、柳井正財団の給付制度に着目する。
柳井財団は正式名称を「公益財団法人柳井正財団」といい、衣料大手ユニクロの柳井会長兼社長が設立した。
「私財をなげうった」、「税金は入っていない」、「公的な資金ではない」、「私的な資金」であるという発信がネットで散見されるが本当であろうか?
その財源を追った。
フォーブス報道によれば、柳井氏の資産額は5兆円で日本長者番付の1位とされている。
ちなみに、ソフトバンク孫正義氏は資産額3兆円で3位。
〇私財はどのように形成されたのか?
柳井氏が所有する5兆円が私財であることは間違いなく、資本主義社会において、それをどう使おうが個人の勝手である。
しかし、ユニクロ製品を購入した顧客が払った金が安くない、かつ、ユニクロ製品を製造販売した労働者の賃金が高くないからこそ、利益を得て形成された私財だ。
別に顧客から巻き上げたり、労働者を搾取したというわけではないだろうが、「5兆円も私財が形成されるんだったら、もうちょっとお給料が欲しかった」という労働者もいるだろうし、「価格で還元して欲しかった」という消費者である庶民もいるだろう。
つまり、柳井氏の5兆円から何か支給された人は、低賃金労働者や物価高にあえぐ消費者からの、怨嗟や羨望や嫉妬や批判的な目線から逃れることはできない。(特にユニクロの労働者と消費者からの)
〇半分以上は「税金」が入っている
内閣府公益法人HPにあるように、公益財団法人への寄付額のうち約半分は減税という形で寄付者に戻ってくる。
つまり、10億円の寄付といいつつ、寄付者の実質支出額は5億円で残りの5億円は税金であるといえる。
(この寄付金控除のせいか、HP開示資料によれば、意外なことに柳井財団には数十年分の事業基金はない。単年度事業費分に必要な資産しか所有していない。つまり、毎年度柳井氏から寄付金を受け入れていると考えられる。従って柳井氏の意向で途中で辞めやすい...もしもの時など継続支給されるのであろうか???また、財団に一括前渡しする方式よりも大口寄付者と理事長が同一人物となり柳井氏個人の影響力を確保するための策として機能することになり、本来の牽制ガバナンス機能が発揮されず、公益財団の運営が私物化される恐れもあるだろう。なお、ユニクロ柳井氏やソフトバンク孫氏が実際に寄付金税控除を利用しているかは開示されていない。孫財団はHPに柳井財団同等の開示資料すら見当たらず、柳井財団より透明性は低い。)
次に、宗教法人でニュースになることが多いが、公益財団法人の活動も基本的に非課税で運営できる。
例えば、上記内閣府サイトに記載されているが、公益財団法人が得る利息や配当は非課税である。
(通常の個人であれば利息等の2割が源泉徴収で税金にとられる)
3つめに、本来、年収1500万円だと手取りは1023万円である。(計算HPにより、社会保険料を含む)
つまり約500万円を納税すべきところを奨学金は非課税にしている。(所得税法第9条第1項第15号《非課税所得》)
いわば取り損ねた500万円の税金を本人に渡してあげているのです。
以上を考え合わせると財団奨学金原資のかなりの部分は税金とも捉えられます。
(例えば、1500万円のうち本来納税すべき500万円を除くと、本人に渡る手取りは1000万だが、手取りのうち半分の500万円は寄付金税控除が原資なので、(500+500=)1000万円は税金が原資であり、純粋な「私財」部分は500万円にすぎない)
〇財団奨学金は私的な資金ではなく公的資金である
不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する公益目的事業を行うのが公益財団法人である。
「私財」部分についても、「公益」財団法人に移管した時点において、もはや「私財」ではなくなり、公的資金となる。
例えば、解散時も財団の財産は出資者に返還するのではなく国等に帰属することになっている。
もはや、特定個人の私的な資金ではないため、「何に使おうが勝手」ではない。
直接的間接的にどの程度税金が入っているかについては諸説あるとしても、いづれにしろ「公益」財団法人である以上「私的な資金」ではなく公的資金であることは明らかであり、その使途となる事業は不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することが法定されています。
税金も入った公的資金で運営される財団から破格の奨学金を受け取った人は、上記の様に様々な形で国民全体の財政的支援を受けている点も踏まえ、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する大きな期待や社会的責任があると考えます。
つまり、国民の負担により形成された公的資金を使っている以上、広く一般大衆からの社会的批判にさらされるのは当然です。
本稿の様に公的資金の行方には厳しい視線が注がれる一方で、高額の学費や物価高騰なども踏まえ、大学などに別腹で要求して当然という考え方もあり得ます。
しかし、年1500万円という破格の公的資金を得ている人間が、別途の主体にも「これくらいの支援はほしいけどね笑」というのは、違和感は感じますが、知性を感じません。本稿で示したような資金の性質の分析やPublicの理解についての分析が欠けているからです。
コロナ交付金たっぷりもらってるのに足りないと文句言っている人と同類と思われるのは賢い言動ではありません。
例えば、下記留学生が目指している歴史保存の法整備や所有者の金銭的負担の課題対応についても、様々な資金の性質や事業の性質を分析したうえで、Publicの理解を得ることは法律的なアプローチをする上で不可欠です。
(成人の万垢の発信がきっかけで作成した本稿ですが、留学生は若い点を考慮し、本稿では極力「お手柔らかな」表現としました。)
なお、5兆円の資産を誇る柳井氏におかれては、毎年ちびちびと寄付するのではなく、例えば、即時一括で1兆円を公益財団法人に寄付することにより、奨学金支給の継続性についての懸念や公益財団法人の運営が私物化される懸念を払しょくされることをお勧めする。
↓クリックで応援お願いします!
「学歴ロンダリングの試算」へ
↓受験関係記事のボタン